東京地方裁判所 昭和27年(行)142号 判決 1959年10月28日
原告 小沢潤一
被告 関東信越国税局長
主文
被告が昭和二十七年一月二十五日付でした原告の昭和二十三年分所得税に関する審査決定の取消を求める請求を棄却する。
被告が昭和二十七年四月二十九日付でした原告の昭和二十四年分所得税に関する審査決定のうち所得金額四四二六九五円三二銭を超過する部分を取消す。
右昭和二十四年分の審査決定の取消を求める原告その余の請求を棄却する。
訴訟費用は三分しその二を原告のその一を被告の各負担とする。
事実
当事者双方の申立及び主張は別紙要約調書及び準備書面と題する書面のとおりである。
(立証省略)
理由
一、昭和二十三年度分の審査決定の取消を求める部分についての判断
(一) 原告が農業を営む者で、昭和二十三年分の所得税の総所得金額として昭和二十四年一月末日まで川越税務署長に対し金一一三、四八五円と確定申告したところ、同税務署長が同年二月二十八日これを金二六〇、五一〇円と更正してその頃その旨原告に通知したこと及び原告が右更正処分に対し同年三月二十七日被告に審査の請求をしたところ、被告は昭和二十七年一月二十五日原告総所得金額は金二六〇、五一〇円(更正と同額)であると決定し、同年二月八日その旨原告に通知したことは当事者間に争がない。
(二) そこで被告の右決定が違法かどうかにつき判断する。
(1) 昭和二十三年度の原告の所得について
昭和二十三年度において原告が金銭出納帳のごとき帳簿を有していなかつたことは当事者間に争がなく、他にその収支関係全般にわたつてその実額を明らかにするに足る資料の存在を認めるに足る証拠はないから一部推計により所得を算出することもやむをえないといわなければならない。
(イ) 事業所得について
(A) 原告は農業所得について実額計算によるべきことを主張しているのであるが、原告が昭和二十三年度において耕作日誌のごときものを有していなかつたことは当事者間に争がないし、原告の右年度における実際の各農作物の収獲量、販売量、販売価格、自家消費量などにまでわたつてこれを明らかにするに足る証拠はない(本件にあらわれた全証拠をもつてしてもその一部を明らかにするに過ぎない)から結局農業所得の大部分を占める畑からの所得については推計によりこれを明らかにすることもやむをえないといわなければならない。
被告は原告の畑からえた所得の推計方法として、各農作物の作付割当面積を基礎として各作物の収量を推計し更に右収量から各作物の販売額を推計し、右収入から必要経費を控訴して算出する方法と、各畑別の農業所得標準率により算出する方法とを主張しているのであるが、各作物別の作付面積が被告どおりであると認めるに足る証拠はなく(かえつて証人諸口会三、同渡辺喜一の各証言及び原告本人尋問の結果を綜合すると右作付面積は供出額をきめるについての事前の割当の数字であつて必ずしも右割当どおりに耕作しなければならないわけではなく、また原告も割当どおりには耕作していなかつたと認められる)また鑑定証人小松崎亮、同大熊光雄の各証言及び鑑定人大熊光雄の鑑定の結果によれば被告主張の各作物別収獲高は本件においては妥当でないと認められるので前者の推計方法による所得の算出は妥当ではないと考えられる。そこで各畑別の農業所得標準率を適用する推計方法により原告の所得を算出することについて検討する。
成立につき争のない乙第一号証の一、によると昭和二十三年度における原告の普通畑の耕作面積は二町六反二畝であると認められ右認定を左右するに足る証拠はない(原告ももつぱら畑の延作付面積を争い畑の地積そのものについてはこれを争つてはいないし、普通畑として二町四反四畝二十二歩の畑を耕作していることはこれを認めているのである。)また茶畑及び桑畑の耕作面積が少くとも各三反三畝(原告は茶畑は三反三畝一九歩と主張している)であることは当事者間に争がない。
またその方式及び趣旨から公務員が職務上作成したものと認められるから真正に成立したと推定される乙第四十一号証の一によると川越税務署長が原告の居村に適用した農業所得標準は普通畑九〇〇〇円、茶畑五、四〇〇円、桑畑二、四〇〇円(各反当り)であると認められる。
そして成立につき争のない乙第四十号証、第四十二号証、証人植竹徳次郎の証言により真正に成立したと認める乙第三十七ないし第三十九号証証人高橋作治の証言により真正に成立したと認める乙第四十三ないし第五十号証、第五十一号証の一、二によると右所得標率により原告の畑所得を算出することは妥当であると認められる。
そうすると原告の普通畑所得は反当り所得標準九〇〇〇円にその耕作面積二町六反二畝の割合を乗じた二三五、八〇〇円、茶畑の所得はその反当り所得標準五、四〇〇円にその耕作面積三反三畝の割合を乗じた一七、八二〇円、桑畑所得はその所得標準二四〇〇円にその耕作面積三反三畝の割合を乗じた七、九二〇円と推認すべきである。
(B) 養蚕所得について
昭和二十三年度に原告の養蚕収入が二二、四八八円であつたことは当事者間に争がなく、養蚕経費が一四、六一七円であることについて原告は明らかにこれを争わず自白したものとみなされるから、右年度における原告の養蚕所得は右差額七八七一円と認められる。
(C) 雑収入について
原告が昭和二十三年九月十三日馬れい薯早期加算金を二、六四六円昭和二十四年三月十五日、昭和二十三年産甘藷超過奨励金を二〇、〇二七円七〇銭及び一、五五八円二〇銭、昭和二十四年三月三十一日昭和二十三年産大麦共済金一、五八六円七〇銭の収入があつたことは当事者間に争がない(要約調書の四被告主張事実(三)(チ)4・6・7・8及び五、原告の答弁(一)(ト)参照)。
(D) 大麦被告滅算について成立につき争のない乙第十三号証によると昭和二十三年度において原告は大麦について一、五八六円の被害をうけていることが認められる。したがつて前記畑所得から右額を滅算すべきである。
(E) 落葉収入について
原告所有の山林中、少くとも小沢一夫所有名義の山林一反五畝を戸ケ崎治作に、小沢多希所有名義の山林二反歩については三村銀三に、小沢定夫所有名義の山林一反五畝九歩については村田平四郎に、小沢一夫所有名義の三反歩については小沢よしにそれぞれ採草権の設定が行われていたことは当事者間に争がないが、右採草権設定について原告が対価を受取つていたと認めるに足る証拠はない。
(F) そうすると原告の事実所得は前記(A)+(B)+(C)―(D)の二九三、六四三円六〇銭と認められる。
(ロ) 利子所得について
成立につき争のない乙第十七号証によると昭和二十三年二月二十九日原告が堀兼村農業協同組合預金利子として四七七円六三銭を受取つていることが認められるし、昭和二十三年九月六日九八一円四一銭同年十二月二十七日三三円六〇銭の預金利子を受取つていることは当事者間に争がないから(要約調書四、被告主張事実(三)(チ)3・5五、原告の答弁(一)(ト)参照)原告の昭和二十三年度における利子所得は右合計一、四九二円六四銭である。
(ハ) 配当所得について
原告が昭和二十三年六月九日堀兼村農業協同組合配当金として二〇〇円を受取つていることは当事者間に争がない。
(ニ) 山林所得について
原告がその所有の堀兼村上赤坂尾花ケ原六四六番所在山林九反四畝二歩及び同所六四一番所在山林一反五畝九歩の立木約二〇〇石を有山奈津次郎に二一〇〇〇〇円で売渡したことは当事者間に争がなくその売買の時期につき争があるのでその点につき検討してみると、成立につき争のない乙第十二号証の一及び証人有山奈津次郎の証言によると昭和二十三年一月頃右売買契約が成立し二月頃代金が支払われたことが認められ、右認定に反する証人小沢よしの証言及び原告本人尋問の結果(第一、二回)は信用できず他に右認定を左右するに足る証拠はない。そうすると右売買に基く所得は昭和二十三年度の所得とさるべきである。ところで山林所得は所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)第九条一項六号により、原告の右売買により得た金銭から必要経費を控除した額の十分の五に相当する金額とすべきであるが、租税特別措置法(昭和二十一年法律第十五号)第十二条第一項、第四項、租税特別措置法施行規則(昭和二十一年大蔵省令第九十九号)第十八条の四により右必要経費の金銭は立木売買により原告がえた金額に命令で定める割合(以下この項では単に所得率という)を乗じて算出した金額とすることもでき、昭和二十八年度については(それ以前については定められていなかつた)百分の三十七とされている(大蔵省告示二〇八号)。昭和二十三年当時右所得率は定められていなかつたが、山林経営上必要経費の割合は昭和二十八年度と大差ないものと考えられるので右率により必要経費の割合を算出すると七七、七〇〇円となる。
そうすると原告の山林所得算出に際し控訴すべき必要経費としては七七、七〇〇円とするのが相当である。よつて原告の昭和二十三年度の山林所得は二一〇、〇〇〇円から七七、七〇〇円を控除した額の二分の一である六六、一五〇円と認めるべきである。
(ホ) そうすると原告の昭和二十三年度の総所得金額は三六一、四八六円二四銭と認めるべきである。
(2) よつて右金額の範囲内で原告の昭和二十三年度の総所得金額を二六〇、五一〇円と決定した被告の審査決定は結局違法でないといわなければならない。
(三) そうすると昭和二十三年度分の審査決定の取消を求める請求は理由がないといわなければならない。
二、昭和二十四年度分の審査決定の取消を求める部分の判断
(一) 原告が昭和二十四年分所得税の総所得金額として昭和二十五年一月末日までに川越税務署長に対し金一二六、三九八円と確定申告したところ、同税務署長が同年二月二十九日これを金四八七、六〇九円と更正し、その頃原告に通知したこと及び原告が右更正処分につき同年三月二十八日被告に対し審査の請求をしたところ、被告は昭和二十七年四月十九日、原告の総所得金額は金四七三、三〇〇円と決定し、その頃原告に通知したことは当事者間に争がない。
(二) そこで被告の右決定が違法かどうかについて判断する。
(1) 昭和二十四年の原告の所得について
(イ) 事業所得について
昭和二十四年度についても昭和二十三年度と同様の理由により推計により算出しなければならないこと及び畑所得の推計方法としては各農作物ごとの販売額の推計によることができないので、各畑の農業所得標準率の適用により算出する方法を検討する。
(A) 畑所得について
被告は昭和二十四年度については普通畑と指定地野菜畑とを区別し各耕作面積を作付割当の作物別反別より逆算して算定しているのであるが、右作付割当の作物反別は昭和二十三年度分の農業所得についての判断(一の(二)の(1)の(イ)(A))において説明したと同一の理由によりこれをそのまま採用することはできない。しかしながら原告としては普通畑として二町四反七畝二十二歩を耕作しその延作付面積は四町一反六畝であり、そのうち指定地野菜以外の作物の延作付面積は三町三反二畝であり、指定地野菜の延作付面積は八反四畝であることはその自認するところであるから原告主張の各延作付面積を原告主張の回転利用度(延作付面積四町一反六畝を耕作面積二町四反七畝二十二歩で除した割合―一、六八)で除してえたところの結果である普通畑につき一町九反七畝指定野菜畑につき五反を耕作していたことは原告もこれを自認しているといわなければならない。(右耕作地の延作付面積に対する割合は畑所得算出につき被告主張の割合よりも有利であるが、原告はその度において被告主張の耕作地の割合の主張を自白したものとみなすべきである)そして昭和二十四年度においては茶畑を三反三畝耕作していたことは当事者間に争がなく、成立に争のない乙第一号証の二によれば右年度においては原告は桑畑をを三反四畝耕作していたものと認められる。また成立につき争のない乙第四十一号証の二による川越税務署長が右年度において原告居村に適用した農業所得標準率は普通畑一一、五〇〇円、指定野菜畑二八、八〇〇円、茶畑一〇、〇〇〇円、桑畑二、四〇〇円(各反当り)であると認められる。
そして成立につき争のない乙第四十号証、第四十二号証、証人植竹徳次郎の証言により真正に成立したと認める乙第三十七ないし第三十九号証証人高橋作治の証言により真正に成立したと認める乙第四十三ないし第五十号証第五十一号証の一、二を綜合すると右所得標準率により原告の畑所得を算出することは妥当であると認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。
そうすると原告の普通畑所得は反当り所得標準一一、五〇〇円にその耕作面積一町九反七畝の割合で乗じた二二六、五五〇円、指定地野菜畑所得はその反当り所得標準二八、八〇〇円にその耕作面積五反の割合を乗じた一四四、〇〇〇円、茶畑所得はその反当り所得標準一〇、〇〇〇円にその耕作面積三反三畝の割合を乗じた三三、〇〇〇円、桑畑所得はその反当り所得標準二、四〇〇円にその耕作地面積三反四畝の割合を乗じた八、一六〇円と推認すべきである。
(B) 養蚕所得について
成立につき争のない乙第二十六号証の一、二によると昭和二十四年度における原告の蚕掃立卵量は初秋二六瓦、晩秋三九瓦であると認められる。
そして前記乙第四十一号証の二によると川越税務署長が原告居村に適用して養蚕所得標準は初秋二、〇〇〇円、晩秋三、一〇〇円(各一〇瓦当り)であると認められ、他に反証のない本件においては所得標準により原告の所得を算出することは妥当であると考えられる。
そうすると原告の養蚕所得は初秋については五、二〇〇円、晩秋については、一二、〇九〇円と推認することができる。
(C) 雑収入について
成立につき争のない乙第十六号証の一によれば原告が昭和二十四年供出干甘藷奨励金として昭和二十四年二月七日二、九四七円五二銭(二月七日干甘藷二等級二俵代暫定支払金額四、四六七円五七銭より公定価格一俵につき七六〇円計一、五二〇円を控除)及び二、六二七円五二銭、(二月七日干甘藷三等級二俵代暫定支払金額三、九八七円五二銭より公定価格一俵につき六八〇円計一、三六〇円を控除)同年五月七日三、九四一円二八銭(五月七日干甘藷三等級三俵代暫定支払金額五、九八一円二八銭より公定価格一俵につき六八〇円計二、〇四〇円を控除)を受取つていることが認められる。また昭和二十四年六月一日大麦パリテイ加算を一七二四円、小麦パリテイ加算を五七二円受取つていることは当事者間に争がない。
そうすると昭和二十四年度の原告の雑収入は一一、八一二円三二銭と認められる。
(D) 落葉収入について
原告が昭和二十四年度においてもその所有山林中八反については他人に採草権を設定していたことは当事者間に争がないが、右設定の対価を原告がえていたと認めるに足る証拠はない。
(E) そうすると原告の事業所得は右合計四四〇、八一二円三二銭と認められる。
(ロ) 利子所得について
昭和二十四年度における原告に利子所得が、一、八八三円あつたことは当事者間に争がない。
(ハ) そうすると昭和二十四年度における原告の総所得金額は四四二、六九五円三二銭と認められる。
(2) したがつて原告の総所得金額を四七三、三〇〇円とした被告の審査決定中四四二、六九五円三二銭を超える部分は違法である。
(三) そうすると昭和二十四年度の審査決定の取消を求める請求中所得金額四四二、六九五円三二銭を超える部分の取消を求める限度で理由があり、その余の部分は理由がない。
三、よつて原告の本訴請求中昭和二十三年度分の審査決定の取消を求める部分は理由がないからこれを棄却し、昭和二十三年度分の審査決定の取消を求める部分は、所得金額四四二、六九五円三二銭を超える部分の取消を求める限度においては理由があるからこれを認容し、その余の部分は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十二条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 石田哲一 地京武人 越山安久)
昭和二十七年(行)第一四二号所得金額審査決定に対する不服事件の要約調書
一 請求の趣旨
(一) 被告が昭和二十七年一月二十五日付でした原告の昭和二十三年分所得税に関する審査の決定のうち所得金額一四二、一九九円を超過する部分
(二) 被告が昭和二十七年四月二十九日付でした原告の昭和二十四年分所得税に関する審査決定のうち所得金額五三、一一八円五一銭を超過する部分
はいずれもこれを取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
二、請求の趣旨に対する答弁
原告の請求を棄却する。
三、請求原因として原告の陳述した事実
(一) 原告は農業を営む者であるが、昭和二十三年分の所得税の総所得金額の申告として、昭和二十四年一月末日までに川越税務署長に対し金一一三、四八五円であると確定申告したところ、同税務署長は同年二月二十八日これを金二六〇、五一〇円と更正すると決定し、その頃その旨原告に通知した。そこで原告は同年三月二十七日右更正決定に対し被告に審査の請求をしたところ、被告は昭和二十七年一月二十五日原告の総所得金額は金二六〇、五一〇円(更正決定のとおりの金額)であると決定し同年二月八日その旨を原告に通知した。
(二) 原告は昭和二十四年分所得税の総所得金額の申告として、昭和二十五年一月末日までに川越税務署長に対し金一二六、三九八円であると確定申告したところ、同税務署長は同年二月二十九日これを金四八七、六〇九円であると更正決定し、その頃その旨を原告に通知した。そこで原告は同年三月二十八日被告に審査の請求をしたところ、被告は昭和二十七年四月十九日原告の総所得金額は金四七三、三〇〇円であると決定し同月二十五日その旨を原告に通知した。
(三) しかし原告の総所得金額は昭和二十三年分としては金一四二、一九九円、昭和二十四年分としては金五三、一一八円しかなかつたのであつて、被告の前記各審査決定中、右原告の各総所得金額を超過する部分は原告の所得を過大に認定した違法があるから該部分の取消を求めるため本訴請求に及んだ。
四、請求原因事実に対する答弁及び昭和二十三年分所得金額に関する主張として被告の陳述した事実
(一) 原告主張の(一)及び(二)記載の事実はすべて認めるが、(三)記載の事実は争う。原告の総所得金額は後記のとおり昭和二十三年分としては金三七九、六七一円、昭和二十四年分としては金四九五、五六四円であると認められるからこれを右金額の範囲内で昭和二十三年分として金二六〇、五一〇円、昭和二十四年分として金四七三、三〇〇円であるとした本件各審査決定はいずれも違法でない。
(二) 昭和二十三年分の原告の収支明細は次のとおりである。
原告は耕作日誌や金銭出納帳などの帳簿を備えておらず、作物の収穫量、販売量、販売価額、自家消費量など収入金の計算に必要な事項を明らかにすることができなかつたので、被告は最も合理的と認められる作付反別を基礎として収入金を計算する方法により原告の所得を推計した。
(1) 農業収入
種目
作付面積(畝)
反収
総収量
単価(円)
金額(円)
備考
大麦
一二四
二、〇五〇石
二五、四二〇石
一、五一五
三八、五一一
(イ)(ロ)(ハ)参照
小麦
一三
四七
〇、七二〇〃
一、八〇〇〃
〇、九三六〃
八、四六〇〃
二、二四六
三一、一〇三
〃
ビール麦
一五
一、八〇〇〃
二、七〇〇〃
二、〇二六
五、四七〇
〃
馬れい薯
三四
三二〇貫
一、〇八八貫
一七三
一八、八二二
〃
甘藷
七二
四五二〃
三、二五四〃
一七三
五六、二九四
〃
陸稲
五二
一、一九三石
六、二〇三石
三、五九五
二二、二九九
〃
藁
―
石当り 五〇貫
三一〇貫
五五
一、七〇五
(ニ)参照
雑穀
二
〇、六二四石
〇、一二四石
二、八六九
三五五
(ホ)参照
野菜畑
一五七
―
―
―
一六七、三五五
(ヘ)参照
茶畑
三三
一〇〇貫
三三〇貫
九〇
二九、七〇〇
桑畑
三四
二二〇〃
七五〇〃
一五
一一、二五〇
(ト)参照
養蚕
―
―
―
―
三二、四八八
雑収入
―
―
―
―
三一、〇一〇
(チ)参照
俵代
―
―
―
―
五、八九八
(リ)番照
落葉収入
二三、六〇〇
(ヌ)参照
合計
五八三
四五五、八六〇
(2) 農業支出((ル)参照)
公租公課 一〇、七九一円
種苗代 八、八六七円
配給肥料代 二五、四八三〃
自由肥料代 五九、四〇〇〃
傭人費 一三、五〇〇〃
空俵、農薬、その他 二六、九四八〃
農具償却 九、九五〇〃
合計 一五四、九三九〃
(3) 農業所得 三〇〇、九二一円
(4) 山林所得 七八、七五〇円((オ)参照)
(5) 所得合計 三七九、六七一円
(三) 右収支明細算定の根拠は次ぎのとおりである。
(イ) 作物別作付面積は、原告居住の堀兼村(当時の名称、現在は狭山市となる以下同じ)役場の原告に対する作付割当面積合計五町八反三畝をもつて原告の作付面積とした。
即ち、原告の居住する地方の普通畑地の一般的な回転利用度(耕地面積と延作付面積の比率)は約二回である。原告の耕作地面積は次表耕地一覧表のとおり茶畑一反五畝四歩、桑畑三反三畝二十三歩、畦畔茶一反七畝十七歩、普通畑二町六反二畝八歩であるので、普通畑が二回回転するものとして延耕作面積を計算すると次のとおり五町九反一畝となり堀兼村役場の原告に対する作付割合面積は畑地の一般的な回転利用度からみても、妥当なものと認められたので、堀兼村役場の作付割当面積をもつて、原告の作物別作付面積と認定したものである。
普通畑(二回回転・二町六反二畝八歩の二倍) 五町二反四畝十六歩
茶畑 (一回作) 一反五畝四歩
桑畑 (〃 ) 三反三畝二十三歩
畦畔茶(〃 ) 一反七畝十七歩
計 五町九反一畝歩
原告の耕地一覧表
所在
地番
地目
地積(畝)
内訳
摘要
根除
茶畑
桑畑
畦畔茶
その他
普通畑
1
大字赤坂字富士見丘
二八〇甲
畑
一三・二〇
一三・二〇
2
〃
二八〇乙
〃
一三・〇六
一・〇〇
一二・〇六
3
〃
二八〇丙
〃
一三・〇六
一・〇〇
一二・〇六
4
〃
二八〇丁
〃
四・二三
〇・一五
四・〇八
5
〃
二八一
〃
八・二一
一・〇〇
七・二一
6
〃
二六〇甲
〃
二八・〇〇
〇・二二
一・〇〇
二・〇〇
二四・〇八
7
〃
二七九
〃
四・〇二
四・〇二
8
同大字月見台
五一三
〃
一〇・〇六
〇・二一
一・二二
三・〇〇
四・二三
9
〃
五一四
〃
一三・〇八
一・二〇
一一・一八
10
〃
五一五
〃
三〇・二〇
一・一三
〇・一五
一・〇〇
二七・二二
11
〃
五一七ノロ
〃
二・一〇
〇・二二
一・一八
12
〃
五一八ノロ
〃
二・〇三
一・〇〇
〇・一三
〇・二〇
13
同大字鶴ノ台
二一九ノイ
〃
一五・〇五
〇・一五
一・〇〇
一三・二〇
14
〃
二二〇
〃
六・一〇
〇・一五
五・二五
15
〃
二三七
〃
一〇・一二
一・一五
〇・一五
八・一二
16
〃
二三八
〃
一〇・〇〇
一・一五
〇・一五
八・〇〇
17
同大字霞ノ丘
二六
〃
二九・二四
〇・二一
五・一五
一・〇〇
二二・一八
18
〃
二七
〃
三二・一二
二・〇八
三〇・〇四
19
〃
二八
〃
一三・二七
一・二一
一二・〇六
20
同大字野
四七八
〃
六四・二七
一・一二
六・〇〇
六・一八
四・〇〇♪一〇・〇〇
三六・二七
その他欄一反歩貸付地
21
大字堀兼字境松
一七一四
〃
一四・〇三
〇・一〇
一三・二三
22
〃
一七一五
〃
二〇・一五
五・二七
一四・一八
その他欄貸付地
23
同大字平野
一九三
〃
一六・〇一
一〇・〇〇
六・〇一
〃
合計
三七七・二一
六・二一
一五・〇四
三三・二三
一七・一七
七・二〇
三四・一八
二六二・〇八
(ロ) 主食及び野菜の収穫高については埼玉県農業試験場が、昭和二十三年度にその本場及び玉井、越ケ谷、入間川、秩父の各分場の試験地で実際に播種育成した結果による農業生産物の収穫高の範囲内で、川越税務署管内の平担地における収穫量の実額調査、原告に対する生産割当量及び農協等について調査した供出実績等を考慮して認定した。右認定は原告に有利である。即ち、作物の品種改良及び栽培法等に関する試験研究を目的としている農業試験場よりも専ら増産を目的としている一般農家の収穫高が多いのが通常であるのみならず、右農業試験場は主食中、大麦、馬れい薯、甘藷、陸稲等については埼玉県下で栽培される代表的品種の数種類について品種毎に実収高を計量しているが、被告の認定した収量はいずれの品種による収穫高よりも遙かに下廻るものである。
(ハ) 主食の価格は、大麦、小麦、ビール麦については政府買入価格(食糧管理法第三条第二項による物価庁、農林省告示第四号及び物価統制令第四条による物価庁告示第七三五号の告示価格)の三等価格を、馬れい薯については統制価格(物価統制令第四条による物価庁告示第四六一号の告示価格)の一等価格を、甘藷については統制価格(物価統制令第四条による物価庁告示第九九八号の告示価格)の一等価格を大豆及び雑穀については統制価格(物価統制令第四条による物価庁告示第一、一〇四号の告示価格)の三等価格を、陸稲については政府買入価格(食糧管理法第三条第二項による物価庁、農林省告示第九号の告示価格)の三等価格を適用した。なお主食について三等価格を適用したのは、堀兼村の属する入間郡の主食検査の結果による平均価格は三等価格を上廻るから原告に有利に三等価格で計算したものである。
(ニ) 藁の価格は、昭和九、一〇、一一各年度の藁の平均価格一貫目四銭八厘に昭和二三年産米政府買入価格決定のために採用した農業パリテイ指数一一四、四を乗じ一貫目五円四九銭五を算出しこれを五円五〇銭と認定したもので政府買入価格の俵代一俵金三七円の計算の基礎となる原料藁代である。
(ホ) 雑穀については前記のとおり大豆の統制価格を適用したが、これは主食が統制されていた昭和二十三、四年当時においては農家の生産する大豆以外の雑穀はすべて大豆に換算してその生産並びに供出されたことと、また埼玉食糧事務所川越支所管内(同支所の管轄区域内に堀兼村はある)の農家の生産する雑穀の主要なものは大豆であるから大豆の統制価格を適用したものである。
(ヘ) 野菜畑収入の明細は次ぎのとおりである。
種目
作付面積反収総収量
単価(円)
金額(円)
(畝)
(貫)
(貫)
人参
五〇
四〇〇
二、〇〇〇
三二
六四、〇〇〇
午旁
一二
四〇〇
四八〇
三五
一六、八〇〇
里芋
一二
四〇〇
四八〇
三三
一五、八四〇
茄子
二
五〇〇
一〇〇
三五
三、五〇〇
南瓜
三三
四五〇
一、四八五
二五
三七、一二五
大根
二八
六〇〇
一、六八〇
六
一〇、〇八〇
胡瓜
九
四〇〇
三六〇
二四
八、六四〇
葱
三
四〇〇
一二〇
二五
三、〇〇〇
トマト
三
三〇〇
九〇
三八
三、四二〇
その他夏作
五
三〇〇
一五〇
三三
四、九五〇
合計
一六七、三五五
蔬菜の収量は前記(ロ)により、その価格は、自由価格と統制価格の平準価格(中庸価格)を適用した。
蔬菜(人参、午蒡、里芋、南瓜、大根、胡瓜、葱、トマト)の統制価格(物価統制令第四条による昭和二十二年物価庁告示第四六五号、同昭和二十三年告示第五九四号、同昭和二十三年告示第一、〇七四号の告示価格)、自由価格(農林省統計調査局編集の農林物価月報の調査価格に基き農家がその生産物を販売する際の手取価格であつて、原告の蔬菜供出当時の価格をいう)、中庸価格(被告認定の蔬菜各種目別収量のうち、原告主張の収量については統制価格を適用し、残収量については自由価格を乗じ、両者の合計額を総収量をもつて除した加重平均値である。なおその他夏作はほうれん草の統制価格の平均価格をもつて中庸価格とした。
品目
被告認定価格
(貫当り円)
統制価格
(〃)
自由価格
(〃)
中庸価格
(〃)
人参
三二
三八、八五
三五~四〇
三七、八七
午旁
三五
五〇、五〇
三〇~五〇
四一、五三
里芋
三三
四一、一三
三〇~四〇
三五
茄子
三五
四八、五〇
二〇~七〇
四一
南瓜
二五
二七、六六
二〇~二七
二六、二九
大根
六
一〇、八八
五~一二
七、四四
胡瓜
二四
二八、九九
三三~一〇〇
二四、四八
葱
二五
三二、九四
二〇~三八
二六
トマト
三八
三九、六三
二五~一〇〇
四三、〇四
その他夏作
三三
(ト) 桑畑収入は、桑葉を養蚕のため原告が自家消費に充当したものと推定せられるから、この全額を養蚕のため必要経費として空俵、農薬、その他の項に計上している。
(チ) 雑収入の内訳は次ぎのとおりである。
番
月日
金額(円)
摘要
1
昭和二三年二月二九日
四七七
堀兼村農協予金利息
2
六月九日
二〇〇
同農協配当金
3
九月六日
九八一、四一
同農協予金利息
4
〃一三日
二、六四六
馬れい薯二一俵分早期加算金
5
一二月二七日
三二、六〇
同農協予金利息
6
昭和二四年三月一五日
二〇、〇二七、七〇
昭二三産甘藷超過奨励金
7
一、五五八、二〇
〃
8
三月三一日
一、五八六、七〇
昭和二三産大麦共済金
9
二、五〇〇
養鶏七羽分
三一、〇一〇、六一
(リ) 俵代収入は、被告が適用した昭和二十三年産主食の統制価格は俵代を含まない価格であるから原告が同年中に供出した主食の俵代収入金は当然に原告の農業収入に計上さるべきである。その内訳は次ぎのとおりである。
供出品目
数量(俵)
単価(円)
代金(円)
大麦
二一
一四、八〇
三一〇、八〇
ビール麦
五
〃
七四
小麦
一〇
〃
一四八
馬れい薯
三六
一七、六四
六三五、〇四
生甘藷
二七〇
一七、五二
四、七三〇、四〇
合計
三四二
五、八九八、二四
(ヌ) 落葉収入は、原告が原告及びその家族の小沢茂夫、同多希二、同定夫等の名義で所有する狭山市大字上赤坂、堀兼所在の山林六町四反一畝八歩のうち約二町三反六畝歩の山林に派生した落葉を反当り一、〇〇〇円の割合で三村銀蔵、小沢よし、坂本啓之助その他の者に売却して得た合計二三、六〇〇円である。
(ル) 農業支出は、原告の申立額を全部認めた外前記桑畑収入を養蚕の必要経費として追加して認定したものである。
(オ) 山林所得は、原告が昭和二十三年二月頃その所有の堀兼村上赤坂尾花ケ原六四六番所在山林九反四畝二歩及び同所六四一番所在山林一反五畝九歩の立木約二〇〇石を高橋輝平及び有山奈津次郎に代金二一〇、〇〇〇円で売却したので、右代金に所得標準率七五%を適用し、その半額の七八、七五〇円を昭和二十三年分課税所得とした。(昭和二十二年法律第二七号旧所得税法第九条第一項第六号参照)
(四) 以上のように昭和二十三年分の原告の総所得金額は金三七九、六七一円と認められるから、これを右金額の範囲内で金二六〇、五一〇円とした昭和二十三年分の審査決定はなんら違法でない。
五、昭和二十三年分所得額についての被告主張事実に対する答弁及び主張として原告の陳述した事実。
(一)(イ) 被告主張事実中原告が耕作日誌及び金銭出納帳を備えていなかつたこと及び桑畑、養蚕収入並びに農業支出が被告主張の金額のとおりであることは認める。
(ロ) 原告は村役場の作付割当面積のとおり耕作していなかつた。原告は供出割当量を生産できる限度で最善の方法で耕地を利用していたが、農業を営むのに準備のため空地を要するから普通畑をすべて年二回も利用することはできない。普通畑の延作付面積は四町三反二畝である。又原告の耕地の内訳の表中10、17、20、22及び23を除きその他の畑の地積が被告主張のとおりであることは認める。右五筆の土地はその後分筆され後記のとおりとなつたものであつて、昭和二十三、四年当時の地積としては争はない。又1、2、4、9、18の畑の内訳が被告主張のとおりであることは認めるが、その他の畑の内訳は次表のとおりである。
所在
地番
地積(畝)
内訳
摘要
根除
茶畑
桑畑
畦畔茶
その他
普通畑
1
大字赤坂字富士見丘
二八〇甲
一三・三〇
一三・二〇
争なし
2
二八〇乙
一三・〇六
一・〇〇
一二・〇六
3
二八〇丙
一三・〇六
一・一五
一一・二一
4
二八〇丁
四・二三
〇・一五
四・〇八
争なし
5
二八一
八・二一
〇・一五
一・一五
六・二一
6
二六〇甲
二八・〇〇
〇・一五
一・〇〇
二・〇〇
二・〇〇
二二・一五
その他欄木蔭
7
二七九
四・〇二
三・一七
〇・一五
8
同大字月見台
五一三
一〇・〇六
〇・一四
三・〇〇
一・二二
一・〇〇
一・〇〇
三・〇〇
その他欄山林及び木蔭
9
五一四
一三・〇八
一・二〇
一一・一八
10
五一五
二九・二〇
一・〇〇
一・〇〇
一・〇〇
二六・二〇
その他欄木蔭
11
五一七ノロ
二・一〇
〇・一五
一・〇〇
〇・二五
12
五一八ノロ
二・〇三
〇・二〇
一・〇〇
〇・一三
その他欄木蔭
13
同大字鶴ノ台
二一九
一五・〇五
〇・一五
二・〇〇
一二・二〇
その他欄苗床
14
二二〇
六・一〇
〇・二〇
五・二〇
15
二三七
一〇・一二
〇・一五
一・一五
〇・一五
七・二八
16
二三八
一〇・〇〇
〇・一五
一・一五
〇・一五
七・一五
17
同大字霞ノ丘
二六
二八・二四
〇・一四
五・〇〇
〇・二三
二・〇〇
二〇・一七
18
二七
三二・一二
二・〇八
三〇・〇四
争なし
19
二八
一三・二七
〇・一五
〇・一五
一・二一
一一・〇六
20
同大字野
四七八
五〇・〇五
一・〇二
六・〇〇
六・一八
二・〇〇
三四・一五
その他欄木蔭
21
大字堀兼字境松
一七一四
一四・〇三
〇・一〇
〇・一五
一三・〇八
22
大字堀兼字境松
一七一五
五・二七
〇・二七
三・〇〇
二・〇〇
23
同大字平野
一九三
六・〇一
〇・一〇
五・二一
合計
三三六・一一
七・二二
一一・〇〇
三三・〇〇
二二・一九
一四・〇八
二四七・二二
(ハ) 20大字上赤坂字野四七八番畑六反四畝二七歩からは後に同番の三山林一畝六歩及び同番の四山林三畝一六歩が分筆されたものであるが、右四畝二二歩は昭和二十三年以前から山林であつて畑として使用した事実はないのに被告主張によると四畝のみをその他欄にあげて除外しているが残り二二歩を畑地と認定しているのは事実に反する。
(ニ) 又右上赤坂字野四七八番畑六反四畝二七歩のうち一反歩は落合長治に貸付けてあつたので、農地改革により昭和二十二年中に右土地一反歩は同人に売渡されたが、昭和二十四年になつて右落合は一反歩の貸付地の外に三畝歩を余分に耕作していたことが判明したので、同年五月になつてこの三畝歩の返還を受けた。従つて原告は昭和二十三年中は右三畝歩を耕作していないから、昭和二十三年中の原告の耕作した普通畑は前記二町四反七畝二二歩から右三畝歩を差引いた二町四反四畝二二歩である。
(ホ) 前記のとおり原告の普通畑の実際の作付延面積は四町三反二畝である。これに前記桑畑三反三畝及び茶畑三反三畝一九歩を加えると原告の総作付面積は四町九反八畝一九歩である。
(ヘ) 原告は後記のとおり実際の作付面積、収穫高及び農協から受取つた代金と自家消費量により所得を計算しているので被告主張の推計の方法はすべて争う。
(ト) 被告主張の雑収入の内訳中(2)ないし(8)については認めるが、(1)は昭和二十二年分の所得に加算されるべきものであり、(9)の収入はない。
(チ) 被告主張の俵代収入は、原告は主食の代金と共に農協より受領しているから特に計算することはできない。
(リ) 落葉収入は否認する。尤も原告は小沢一夫所有名義の山林一反五畝について戸ケ崎治作に、小沢多希二所有名義の山林二反歩について三村銀三に、小沢定夫所有名義の山林一反五畝九歩について村田平四郎に、小沢一夫所有名義の山林三反歩について小沢よしに夫々昭和二十三、四年頃堀兼村農地委員会によつて採草権の設定が行われた事実はあるが原告は採草料の支払を受けておらない。又、坂本啓之助に対して落葉を売却したのは昭和二十年頃までである。
(ヌ) 山林所得は否認する。昭和二十二年十一月二十五日有山奈津二郎に対し薪炭材を金二一〇、〇〇〇円で売却したことはあるが、その代金は一部を契約と同時に受けとり、残金は有山が伐採に着手した昭和二十三年二月頃に受領したが、売却が昭和二十二年中になされたものであるから同年分の所得に計上されるべきである。
(二) 昭和二十三年中の原告の収支の明細は次ぎのとおりである。
種目
作付面積(畝)
総収量
金額(円)
反収
単価(円)
備考
大麦
一二〇
五一俵
一〇、八貫
三九、二五九、二二
四二八俵
七六五、五七
(イ)(ロ)参照
小麦
三七
一〇俵
九、八一二、〇〇
二七〃
九八一、二〇
〃
ビール麦
一二
五俵
四、八三〇、〇〇
三八五〃
九六六
〃
馬れい薯
二五
五七俵
六貫
一五、九九六、〇〇
二三〃
二六八、二五
〃
甘藷
八五
三二〇俵
六四、一八二、〇〇
三七、六五〃
二〇〇、五七
〃
陸稲
五二
六、二四石
一四、六九八、〇〇
一、三五六
〃
野菜
一〇〇
六四、一三〇、六九
(イ)(ロ)(ハ)参照
茶葉
三三、一九
二五八貫九
二三、二二〇、〇〇
七一貫六七
九〇
桑畑
三二
一一、二五〇、〇〇
争なり
養蚕
二二、四八八、五七
争なし
奨励金等
二七、二七一、六一
(ニ)参照
合計
四九八、一九
二九七、一三八、〇九
(2) 農業支出 一五四、九三九円 (ホ)参照
(3) 所得 一四二、一九九円〇九銭
(イ) 右収入の計算は、前記のとおり実際の作付面積、収穫高及び農協から受取つた代金と自家消費量に基く所謂実額計算であつて、被告主張の推計によるものとは異る。
(ロ) 昭和二十三年中は主食、野菜とも全部農協に出荷したが、その価格は主食については政府買入価格(農協手数料は含まれていない)であつて、原告が農協より受領する金額でこのなかには俵代も含まれている。野菜については売上額の百分の二の手数料を差引いた金額を農協から受けとつたがこの金額を代金とした。
(ハ) 野菜の収入の内訳は次ぎのとおりである。
種目
作付面積(畝)
総数量(貫)
反収(貫)
単価(円)
金額(円)
人参
一〇
二五〇
二五〇
二三
五、七五〇
午蒡
四
八五
一七
四八、六六
四、一三六、五一
南瓜
四五
一、七〇〇
三七八
二六
四四、二〇八
大根
一六
六一〇
三〇〇
七、一一
三、四一四、八〇
胡瓜
一〇
二五七、九五
二五七、九五
七、八六
二、〇二七、八一
トマト
五
九六、八
一九、九二
二三、八四
二、二八三、五七
雑野菜
一〇
三六五
三六五
六、三三
二、三一〇
合計
一〇〇
六四、一三〇、六九
(ニ) 奨励金等とは被告主張の雑収入(2)ないし(8)のもの及び福徳預金利子四円と甘藷追加金二三四円を加算したものである。
(ホ) 農業支出は被告主張額による。
六、昭和二十三年分の所得に関する原告主張事実に対する答弁として被告の陳述した事実
原告主張事実はすべて争う。
七、昭和二十四年分の所得に関する主張として被告の陳述した事実
(一) 昭和二十四年分の原告の収支明細は次のとおりである。
所得の計算昭和二十三年と同じ方法である。
(1) 農業収入
種目
作付面積(畝)
反収
総収量
単価(円)
金額(円)
備考
大麦
九三
二、五三〇石
二二、五二九石
一、九五三
四五、九五二
(イ)(ロ)参照
小麦
七二
一、六〇〇石
一一、五二〇〃
二、八九九
三三、三九六
〃
ビール麦
一五
二、〇〇七〃
三、〇一〇〃
一、五〇四
七、五三七
〃
馬れい薯
三一
三八一貫
一、一八一貫
二〇八
二四、五六四
〃
甘藷
六〇
四五三〃
二、七八一〃
二三二
六三、〇五七
〃
陸稲
七四
一、一四四石
八、四六五石
四、一〇五
三四、七四八
〃
藁
石当り 五〇貫
四二三貫
七五〇
三、一七二
(イ)(ハ)参照
雑穀
二
〇、七八〇石
〇、一五六石
三、三九二
五二九
(イ)(ニ)参照
野菜畑
一五〇
八、三五〇貫
二八五、三五五
(イ)(ホ)参照
茶畑
三三
一〇〇貫
三三〇〃
一五〇
四九、五〇〇
(イ)参照
桑畑
三四
二五〇〃
八五〇〃
二〇
一七、〇〇〇
(イ)(ヘ)参照
養蚕
四九、二七〇
(イ)参照
福業収入
六、五〇〇
(ト)参照
雑収入
一六、九一二
(チ)参照
落葉収入
二三、六〇〇
(リ)参照
合計
五六四
六六一、〇九二
(2) 農業支出
公租公課 二〇、五七九円
種苗代 一八、五七七円
配給肥料代 二五、一七六円(ヌ)参照
自由肥料代 五八、八二五円(ヌ)〃
傭人費 一五、〇〇〇円
農具及び償却 二、六六五円
桑葉その他 二六、五二二円
合計 一六七、三四〇円
(3) 農業所得 四九三、七五二円
(4) その他の所得 一、八一二円(オ)参照
(5) 所得合計 四九五、五六四円
右収支明細算定の根拠は次ぎのとおりである。
(イ) 作付面積及び反収については昭和二十三年分と同様の方法によつて認定した(四、(ニ)(イ)(ロ)参照但し農業試験場の収穫高は昭和二十四年度分による)
(ロ) 主食(大麦、小麦、ビール麦、馬れい薯、甘藷、陸稲、雑穀)の価格は堀兼村を管轄する農林省川越食糧検査事務所の検査に基いて主食品別に検査数量及び検査等級を求め、この数量に検査等級別統制価格を乗じて等級別に供出価格を算出し、この金額の合計額を品目別検査総収量で除し加重平均価格を算定しこれを適用した。また統制価格は、大麦及び小麦については昭和二十四年六月十日農林省物価庁告示第一号の告示価格、馬れい薯については同年十二月十三日同告示第一〇号、甘藷については同年十一月一日同告示第六号の告示価格(供出時期によつて価格が相違するがその平均価格を採用した)、陸稲については同年十二月十三日同告示第七号の告示価格、雑穀については同年十二月二十八日同告示第一三号の告示価格によつたものである。
(ハ) 藁の価格は昭和二十三年(四、(二)(ニ)参照)と同様に昭和九、一〇、一一各年度の藁の平均価格一貫当り四〇銭八厘に農業パリテイ指数一五六、四三を乗じて一貫当り七円五〇八を算出しこれを七円五〇銭と認容した。
(ニ) 離穀の価格は大豆の価格によつたがその理由は昭和二十三年分と同じである(四(二)(ホ)参照)。
(ホ) 野菜畑収入の明細は次ぎのとおりである。
種目
作付面積(畝)
反収(貫)
総収量(貫)
単価(円)
金額(円)
人参
五〇
五〇〇
二、五〇〇
三〇
七五、〇〇〇
午蒡
一五
四〇〇
六〇〇
九〇
五四、〇〇〇
里芋
九
四五〇
四〇五
八〇
三二、〇〇〇
茄子
三
五五〇
一六五
六〇
九、九〇〇
南瓜
一七
五〇〇
八五〇
三〇
二五、五〇〇
大根
三三
八五〇
二、八〇五
一一
三〇、八五五
胡瓜
七
五五〇
三八五
七〇
二六、九五〇
葱
三
七〇〇
二一〇
四〇
八、四〇〇
トマト
二
五〇〇
一〇〇
七五
七、五〇〇
その他夏作
一一
三〇〇
三三〇
四五
一四、八五〇
合計
一五〇
八、三五〇
二八五、三五五
蔬菜の価格は、次表のとおり自由価格(農林省統計調査局編集の農林物価月報但し四月から十二月までは農林物価賃金月報によつて埼玉県における農村販売品自由価格の調査に基き農家がその生産物を販売する際の手取価格)よりはるかに下廻る価格を適用した。
自由価格
種目
昭和二十四年中最高価格(円)(A)
同年中最低価格(円)(B)
(A)(B)(C)の平均価格(円)
昭和二十四年中中庸価格(円)
被告の認定価格(円)
人参
一〇九
三三
五〇
六四
三〇
午旁
一五五
四五
八〇
九三
九〇
里芋
一〇〇
五〇
六〇
七〇
八〇
芋子
一〇八
八七
九〇
九五
六〇
南瓜
五〇
一〇
三八
三二
三〇
大根
二三
一〇
二二
一八
一一
胡瓜
一〇〇
六四
八七
八三
七〇
葱
七七
一五
四八
四六
四〇
トマト
一二五
七五
七五
九二
七五
その他
(ほうれん草)
一六七
七〇
一二〇
一二九
四五
(ヘ) 桑畑収入については昭和二十三年と同じである(四(ニ)(ト)参照)
(ト) 副業収入の内訳は次のとおりである。
兎 親二匹 子一匹 三、〇〇〇円
鶏 七羽 三、五〇〇円
合計 六、五〇〇円
(チ) 雑収入の内訳は次ぎのとおりである。
月日
金額(円)
摘要
1
昭和二四年二月七日
二、九四七、五二
昭和二四年供出干甘藷奨励金
2
〃
二、六二七、五二
〃
3
四月一三日
五八七、五〇
甘藷苗
4
五月七日
三、九四一、二八
昭和二十四年供出干甘藷奨励金
5
六月一日
一、七二四、
大麦パリテイ加算(四〇俵分)
6
〃
五七二、
小麦パリテイ加算(一〇俵分)
パリテイ加算については昭和二四年四月三〇日農林省物価庁告示第二号、第三号参照
7
四、五一二、七二
昭和二四年麦類、馬れい薯、甘藷、供出俵代二六七俵
内訳
供出品目
数量
単価(円)
代金(円)
大麦
三五
一四、八〇
五四七、六〇
小麦
一七
一四、八〇
二五一、六〇
ビール麦
九
一四、八〇
一三三、二〇
干甘藷
五
一七、五二
八七、六〇
馬れい薯
五二
一七、六四
九一七、二八
甘藷
一四七
一七、五二
二、五七三、四四
合計
一六、九一二、五四
(リ) 落葉収入については昭和二十三年分と同様である(四(ニ)(チ)参照)
(ヌ) 肥料代は農林統計調査部の調査した農家経済調査による畑一反歩当りの肥料代に原告の畑地利用回転度数及び特殊農産物(蔬菜)作付の事情を加味して一反歩当り金二、四四八円と認めて算定した。
(ル) 桑畑収入は養蚕内必要経費として桑葉その他として計上した。
(ヲ) その他の所得とは利子所得であつてその内訳は次ぎのとおりである。
(1) 堀兼村農協預金利子 一、〇四九円七四銭
(2) 同自由預金利子 六〇二円二九銭
(3) 〃 一六〇円五二銭
合計 一、八一二円五五銭
(二) このように原告の昭和二四年分の所得は四九五、五六四円と認められるからこれを金四七三、三〇〇円とした昭和二四年分の審査の決定は違法でない。
八、昭和二十四年分所得額についての被告主張事実に対する答弁及び主張として原告の陳述した事実
(一)(イ) 被告主張の事実中、桑畑収入及び利子所得は認める。又雑収入の内訳中(3)、(5)及び(6)の収入のあつたことは認めるがその他の事実はすべて争う。
原告は昭和二十四年分についても後記のとおり実際の収穫高農協及び市場から受領した代金と自家消費量に基いて所得を計算しているので被告主張の推計方法はすべて争う。
(ロ) 昭和二十四年中の原告の耕作した畑の面積は前記(五、(一)(ホ)参照)のとおり)普通畑二町四反七畝二十二歩、桑畑三反三畝茶畑三反三畝一九歩である。(このうち普通畑三畝歩は同年五月に落合より返還を受けて耕作を始めた)又前記五、(一)(ホ)で述べたとおり畑の回転率は年二回は不可能であつて普通畑の延作付面積は四町一反六畝である。
(二) 原告の昭和二十四年中の収支の明細は次ぎのとおりである。
種目
作付面積(畝)
総収量
金額(円)
反収
単価(円)
備考
大麦
八二
四八俵
四六、四〇六、四〇
八、八俵
九六六、八〇
小麦
六〇
二〇〃
二五、五五六、〇〇
三、三〃
一、二七七、八〇
ビール麦
二五
九〃
一一、二九五、二〇
三、六〃
一、二五四、八〇
馬れい薯
三一
七二八貫
一六、四五二、八〇
二三五貫
二二、七四
甘藷
六〇
二、四七二〃
四八、五三〇、〇〇
四一二〃
一九、六四
陸稲
七四
四石五一
一八、五四二、九一
二、六一石
四、一一
内二反は干害
野菜
八四
一、三二九貫
三四、四一四、八六
一五八貫
二五、六七
茶葉
三三、一九
一一七、八貫
一八、七一〇、五〇
三六、六貫
一五八、八三
桑畑
三三
一七、〇〇〇、〇〇
争なし
養蚕
三一、六八三、四七
奨励金等
二、九五九、二八
利子
一、八八三、六一
合計
四八二、一九
二七三、四三三、〇三
(イ) 右収入は昭和二十三年分と同様に実額計算によるものである。
(ロ) 価格は、主食については農協より受取る俵代を含む政府買入価格により、野菜は市場に対する売上金額による。
(ハ) 野菜の各種別の内訳は次ぎのとおりである。
種目
作付面積(畝)
数量
金額(円)
備考
南瓜
二五
三五〇貫
八、七五〇
人参
二三
四七五
七、七八二、三六
乾抜のため発芽不良
午蒡
一
三一九
一四四
〃
里芋
六
五三〇
八、六一〇
大根
二五
一〇〇
五八四
大部分は廃業
きうり、なす、ねぎ等
三
一七五
四、五〇〇
自家消費分
南瓜、人参、午蒡、大根のくず
一
三、五〇〇
箒草
一
五四四、五〇
合計
八四
三四、四一四、八六
(ニ) 桑畑収入は桑葉を養蚕のため原告が自家消費したので養蚕の必要経費となる。
(ホ) 奨励金等収入は被告主張の雑収入の内訳欄(3)、(5)及び(6)の外小麦奨励金七五、七八銭を加算した。
(ヘ) 預金利子収入は被告主張のもののほか、農協国民貯金利子五七円五銭及び農協配当金一四円を加算した。
(2) 農業支出は次のとおりでその合計は金二二〇、三一四円五十二銭である。
種目
月日
金額(円)
種目
月日
金額(円)
(A) 公租公課
13
農協費
IIX、六
一、〇九八、二五
1
地租税
V、一七
一、一五八、
14
農協繭生産割
〃二七
一二三、
2
家屋税
〃二七
七四八、
小計
一六、七八六、五八
3
麦共済金
VI、一三
一、三一二、四六
(B) 種苗代
4
農協費
VI、一三
四五八、四五
15
種馬れい薯
23IIX、二二
一、一五二、二〇
5
車税
VI、一八
六六〇、
16
〃
II、一九
一、一三三、三八
6
農協費
VII、三〇
一四九、
17
種ビール麦塩
二、三四〇、八七
7
共済費
VIII、二〇
二九六、九七
18
種馬れい薯
II、二八
二四四、二九
8
地租税
VIII、一三
一、四七九、
19
種馬れい薯
III、二八
五、五二〇、九〇
9
家屋税
VIII、二五
六一二、
20
種陸稲
V、一六
三〇三、四六
10
農協費
XI、二五
四五八、四五
21
人参種子代
IV、一〇
一、五五五、〇〇
11
事業税
〃
八一、七三
22
桑苗代
IIX、一六
四〇〇、
12
原動機税
〃
六〇、
23
蚕種代
IIX、二四
二、一〇六、
24
桑葉代
一七、〇〇〇
36
日傭費
七、〇〇〇
小計
三一、七六六、二〇
37
茶摘賃
八、〇〇〇
(C) 配給肥料
小計
三〇、〇〇〇
25
配給肥料
23XI、三〇
三、八七五、一四
(G) 農具償却等
26
〃
〃X、二五
三、一七八、五〇
38
電力料
六、六六六
27
〃
〃IIX、二七
三、七七五、二六
39
農具修理費
七五〇
28
〃
III、一二
二、三八二、六一
40
配給空俵代
X、七
二二八
29
IV、二六
六、七二八、六九
41
〃
XI、一五
五五五、七八
30
VIII、一八
四、七三八、五六
42
自由空俵代
VIII
一、二〇〇
小計
二四、六七八、七六
43
配給品代
V、一六
三〇三、五六
(D) 自由肥料
44
報奨品代
VIII、一〇
三一一
31
〆粕
23X、二二
一八、八〇〇
45
〃
VIII、四
九八〇
32
藁灰
II、五
二二、五〇〇
46
〃
XI、九
二、一五八、三〇
33
魚肥
II、三〇
三五、〇〇〇
47
配給品代
XI、一六
六八〇、一七
34
化成肥
III、二六
二三、七〇〇
48
〃
〃
一、五七四、八七
小計
一〇〇、〇〇〇
49
養蚕報償
I、三一
九〇二、七〇
(F) 傭人費
50
〃
II、六
二五〇、六〇
35
年傭人費
一五、〇〇〇
51
温床紙代
III、二八
五二二
小計
一七、〇八二、九八
合計
二二〇、三一四、五二
(3) 所得 五三、一一八円五一銭
九、昭和二十四年分所得についての原告主張事実に対する答弁として被告の陳述した事実
(一) 原告主張の昭和二十四年分収支明細中収入に関する部分は全部争う。
(二) 農業支出中後記の分をのぞいては認める。
(イ) (1)及び(8)の地租の合計額二、六三七円中、二、二三二円はこれを認めその超過額は否認する。原告に対する昭和二十四年分の地租は金二、三六二円であつてこのうち宅地に対するものは二六一円であるが宅地の二分の一は居宅の敷地と認められるから農業に必要な土地とは認められないからこの部分に対応する地租一三〇は農業上の必要経費ではない。
(ロ) (2)及び(9)の家屋税、一三六〇円のうち四一二円を否認し九四八円を認める。即ち原告の家屋の建坪一六五坪二合五勺には居宅分八五坪二合五勺が含まれるから該部分に対応する四一二円は農業上の経費とならない。
(ハ) (6)農協費一四九円、(10)農協費四五八円四五銭の全額及び(13)農協費中四八五円四五銭を超過する部分は否認する。
(ニ) 原告主張の肥料代((C)(25)ないし(30)(D)(30)ないし(34))一二四、六七八円七六銭中被告主張の八四、〇〇一円を超過する部分は否認する。
(ホ) (38)電力料六、六六六円のうち三六三六円を認めこれを超過する三、〇三〇円は農業上の経費と認められない。即ち電力を農業用に消費するのは主として原告生産の大麦、小麦、ビール麦及び陸稲等の脱殻調整のためであり、その時期は六月以降十一月までであるから一月から五月までと十二月の電力消費料(一カ月六〇六円)は農業上の支出と認められない。
準備書面(被告)
被告は、さきに原告の本件各係争年分の総所得金額が本件各処分の認定額を下らないこと及びその収支計算による算定根拠について詳述したが、以下農業所得標準によつても同様の結果の得られることを明らかにする。
一、(本件各係争年分の農業所得標準)
(イ) 本件係争年分である昭和二十三、二十四両年度においては、未だ青色申告の制度はなく、また、農業所得者の大部分は所得計算に必要な帳簿書類を備え付けていなかつたので、各税務署は、次のような方法により農業所得標準を求めた。すなわち各税務者は、それぞれ先づその管内を数分した上各地域別に中庸と認められる相当数の農家を選び、これを対象として、各種作物別にその一反当りの収入金及び経費等の明細を調査し、よつて一反当りの所得すなわち農業所得標準を算定したものである。
(ロ) しかして、訴外川越税務署長が原告居村に適用した農業所得標準は次のとおりである。
(1) 昭和二十三年分
(畑別) (反当所得)
普通畑 九、〇〇〇円
茶畑 五、四〇〇円
桑畑 二、四〇〇円
(2) 昭和二十四年分
(畑別) (反当所得)
普通畑 一一、五〇〇円
指定地野菜畑 二八、八〇〇円
茶畑 一〇、〇〇〇円
桑畑 二、四〇〇円
右指定地野菜畑とは、農林省指定蔬菜地(当時野菜確保のため野菜作付適地として指定され、肥料の特別配給を受け野菜を専門に耕作する土地)を指す。
二、(原告に対する農業所得標準率の適用)
(イ) 訴外川越税務署長は、原告居村の農業所得者に右一、(ロ)記載の農業所得標準率を適用して当該各年度の課税をした。
(ロ) ところで、原告も各係争年分について農業所得の計算に必要な帳簿書類を備え付けていないので、訴外川越税務署長は右標準率により原告の課税標準を算定したものであるが、いまその遺漏を補つて、右標準率により、原告の農業所得を計算してみると、三、に述べるように原告の昭和二十三年分の所得金額は金三七二、九八五円、同二十四年分の総所得金額は金四九八、五九五円となり、いずれも本件更正処分の認定額を上廻るものである。
(ハ) なお原告の農耕地は、居村において概ね上位と認められまた係争年分における原告方の家族は次のとおりであつて労働力も他の農家に比し恵まれていても、劣るものではなく、その他原告には農耕上何ら他の農家に比して著しく不利と認められる格別の事情は無く、従つて原告の収益状態が居住村落の他の農家に比し悪かつたと認めるべき理由は無い。故に原告についても一般の農家と同様農業所得標準によつてその農業所得を計算することは妥当である。
氏名
昭和二十三年当時満年令
同二十四年当時満年令
原告との続柄
小沢潤一
四三才
四四才
本人
〃たか
七九
八〇
母
〃たか
四六
四七
妻
〃と志子
二三
二四
長女
〃志ず子
二〇
二一
二女
〃一夫
一八
一九
長男
〃茂美
一五
一六
二男
〃定夫
一二
一三
三男
〃た希一
九
一〇
四男
〃婦美子
七
八
三女
渡辺次男
一八
一九
雇人
三、(原告の総所得金額)
(一) 昭和二十四年分
(イ) 原告の耕作面種
普通畑 二町六反二畝
茶畑 三反三畝
桑畑 三反三畝
(ロ) 事業所得
区分
耕作面積
所得標準
金額
備考
1 普通畑所得
二町六反二畝
九、〇〇〇円
二三五、八〇〇円
2 茶畑所得
三三
五、四〇〇
一七、八二〇
3 桑畑所得
三三
二、四〇〇
七、九二〇
小計
二六一、五四〇
4 養蚕所得
七、八七一
収入
(二二、四八八)
原告主張♪二二、四八八円
経費
(一四、六一七)
原告経費は争わず。なおこの額は二十四分養蚕所得標準における経費率六五%によつた。
5 雑収入
馬れい薯早期加算金
(二三、九、一三)
二、六四六円〇〇銭
原告主張二、六四六円
甘藷超過奨励金
(二四、三、一五)
二〇、〇二七円七〇銭
〃二〇、〇二七円七〇銭
〃
(〃)
一、五五八円二〇銭
〃一、五五八円二〇銭
大麦共済金
(二四、三、三一)
一、五八六円七〇銭
〃一、五八六円七〇銭
小計
二五、八一八円
6 大麦被告減算
一、五八六
7 >落葉収入
八、〇〇〇
山林八反九歩、一反当り収入一、〇〇〇円
8 >事業所得
合計
三〇一、六四三
(ハ) 利子所得 金一、四九二円
内訳
農協利子 二三、 二、二九 四七七円六三銭
〃 二三、 九、 六 九八一円〇〇銭(原告主張九八一円)
〃 二三、一二、二七 三三円六〇銭(〃三三円六〇銭)
(ニ) 配当所得 金 二〇〇円
農協配当 二三、 六、 九 二〇〇円 (〃二〇〇)
(ホ) 山林所得 金六六、一五〇円
右の計算内容のうち収入金二一〇、〇〇〇円は従前の主張に同じ。所得率については、昭和二十九年二月五日大蔵省告示二〇八号所定の六三%によつた(その以前においては山林の所得標準は設定されていなかつた)。
その二分の一が課税所得となる。
(ヘ) 総所得金額 金三六九、四八五円
右は前記(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)の合計額である。
(二) 昭和二十四年分
(イ) 原告の耕作面積は次のとおりである。この年分は普通畑と指定地野菜畑とを区別して所得計算をした関係上、その各耕作面積を作付割当の作物別反別により逆算して算定した。右の結果は合計において右両畑の総実反別二町六反二畝を一反四畝下廻る。
普通畑 一町七反三畝
すなわち右は大麦九反三畝、小麦七反二畝、ビール麦一反五畝、馬れい薯三反一畝、甘藷六反、陸稲七反四畝、雑殻二畝の延耕作面積(三町四反七畝を回転利用度二回で除したものである。
指定地野菜畑 七反五畝
すなわち右は普通畑作物以外の作物の延耕作面積(一町五反)を回転利用度二回で除したものである。
茶畑 三反三畝
桑畑 三反四畝
(ロ) 事業所得
区分
耕作面積
所得標準
所得
1 普通畑所得
一町七反三畝
一一、五〇〇円
一九八、九五〇円
2 指定地野菜畑所得
七五
二八、八〇〇
二一六、〇〇〇
3 茶畑所得
三三
一〇、〇〇〇
三三、〇〇〇
4 桑畑所得
三四
二、四〇〇
八、一六〇
小計
四五六、一一〇
5 養蚕所得
一七、二九〇
収入
(四九、二七〇)
原告主張三二、六八三円
経費
(三一、九八〇)
注参照
6 雑収入
干甘藷奨励金
(二四、二、七)
二、九四七円五二銭
〃
(〃)
二、六二七円五二銭
〃
(二四、五、七)
三、九四一円二八銭
大麦パリテイ加算
(二四、六、一)
一、七二四円〇〇銭
原告主張一、七二四円
小麦〃
(〃)
五七二円〇〇銭
〃五七二円
小計
一一、八一二円
7 落葉収入
八、〇〇〇山
林八反九歩、一反当り収入一、〇〇〇円
8 事業所得
合計
四九三、二一二
注、初秋蚕掃立 二六瓦、一〇瓦当り所得標準二、〇〇〇円
晩秋蚕〃 三九瓦、 〃 三、一〇〇円
所得一七、二九〇円
(ハ) 利子所得 金一、八八三円
(原告主張 一、八八三円六一銭)
(ニ) 総所得金額 金四九五、〇九五円
右は前記(ロ)、(ハ)の合計額である。
(三) なお、前記(一)、(二)の農業所得の計算においては一方養蚕所得および雑収入を加算し、他方大麦被害を減算したのは、前記農業所得標準の計算にこれらの事項が織込まれていないからである。